第28回アジア近代美術研究会が下記の通り開催される。
今回は、造形作家として16年間インドネシアで制作活動を続け2010年に日本に帰国した、スンダランドアートネット理事、廣田緑の発表。
今回は、造形作家として16年間インドネシアで制作活動を続け2010年に日本に帰国した、スンダランドアートネット理事、廣田緑の発表。
現在、南山大学大学院国際地域文化研究科アジア・日本領域で、インドネシア現代美術を研究している廣田が、今年6月から7月にかけてインドネシアに赴き、現地調査を行った。その調査成果をふまえ、最新のデータに基づいた調査研究の中間報告を行う。
《発表要旨》
2007~2009年に美術ブームを経験したインドネシアの現代美術界(Seni Kontemporer)は、その〈場〉に関わるアクターの増加、アートマーケットによる経済的影響により、著しい変化の過程を辿っている。こうした中、アーティスト、キュレーター、コレクター、ギャラリストなどのアクターは、どのように交渉し合っているのか、そして斯界全体の制度は各アクターとどのように関わっているのか。
この美術ブームの要因には、スハルト独裁政権崩壊後の国内政治の安定と経済成長、インドネシア若手富裕層によるアートへの投資熱、FacebookやBlackberryなどによる世界的なSNSおよび情報交換ツールの進歩、中国の経済成長などが考えられる。これらの要因とそれによって生じた新たな状況を検証するために、本研究では2004年創刊のインドネシア唯一のメジャーアート誌『Visual
Arts』の記事をはじめ、アーティスト、キュレーター、コレクター、ギャラリストたちへのインタビューを活用して分析を試みている。
去る6月28日より7月20日まで本研究の最終調査として、ジャカルタ、バンドン、スラバヤ、ジョグジャカルタ、バリの5都市を回った。本発表では、美術ブーム前後の美術界の状況を概観しつつ、調査で明らかになった最新状況を報告し、現時点でもっとも影響力のあるアクターに注目し、アクター間のバランスの変化や交渉から現状を把握したい。インドネシア国内における現代美術発展を強く牽引した影響力あるアクターとしては、「ART/JOG12」の実施者Art Management、また自らをArt Loverと称する、ジャカルタで生まれた若手富裕層コレクターへのインタビューも併せて紹介する。
注)本研究テーマの修士論文においては、西欧の美術史におけるContemporery Artとも、日本における「現代美術」「現代アート」とも異なる、インドネシアの現代美術の表記に原語である「スニ・コンテンポレル(Seni
Kontemporer)」をそのまま使用している。
《Pose1,2,3 Sofa》 Handiwirman Saputra 2011
第28回アジア近代美術研究会
「インドネシア現代美術界の多様化するアクター」
廣田 緑
主催:アジア近代美術研究会/アジア美術におけるローカルカラーとモダニズム研究会
日時:平成24年8月10日(金) 17:00-19:00
場所:福岡アジア美術館 8階 会議室